ほっとけやん 第36話

わかやま新報2010年4月29日掲載

すべての人が幸せに生きる地域のづどいが一歩前に

障害者自立支援法訴訟の勝利をめざす和歌山の会 加藤 直人

「障害のある人が利用する福祉サービスに利用料を課した障害者自立支援法は、憲法違反だ」と訴えを起こした自立支援法違憲和歌山訴訟は4月9日、和歌山地方裁判所で原告大谷真之さん、被告国、和歌山市の双方で和解が成立しました。これによって訴訟は終結しました。
自立支援法訴訟は全国一斉に一昨年、福岡、広島、神戸、大阪、京都、大津、東京、さいたま、奈良、和歌山、盛岡、旭川、岡山、名古屋の14地方裁判所で提訴、原告は合計71名に及びました。昨年8月の総選挙で政権が交代し、翌9月厚生労働大臣が自立支援法の廃止を明言、政府と原告・弁護団の交渉の末、今年1月7日国との基本合意文書が交わされました。この合意の実行をもって全国の裁判での和解が今、順次進んでいます。4月21日、東京での和解を最後に終結します。
合意は次のように謳います。「国は速やかに応益負担制度を廃止する」「平成25年8月までに新たな総合福祉法を実施する」「障害福祉施策の充実は憲法等に基づく障害者の基本的人権の行使を支援するものである」「拙速な制度施行、応益負担の導入など(中略)人間としての尊厳を深く傷つけたことに対して原告はじめ障害者、家族に心から反省の意を表する」として、新法制定にあたり、原告・弁護団の同日付要望書、障害者自身の参画を目指します。すでに基本合意によって新法の検討を進める「障がい者制度改革推進会議」が月2回のペースで第6回まで開催されています。会議委員は24名、うち14名が障害当事者です。
さて、これまで政府が障害者施策を決定する上で、「障害者の基本的人権の行使を支援」すると述べたり、過半数が障害者で占める「推進会議」、この「第5回推進会議」に出席した鳩山首相が「障害者権利条約を堂々と批准するように国内法の整備をする」との発言、その下の「専門部会」と合意履行のための「検証会議」への訴訟団からの参画が実現するなどこれらは実に画期的です。
さらに基本合意は国の障害関係予算の国際水準並みへの増額を目指しています。この障害福祉施策の前進的転換に際して全国の自立支援法訴訟と今回の和解が歴史的な役割を果たしたと評価されるでしょう。
しかし、和歌山訴訟和解報告集会で原告の大谷真之さんが述べたのは、「これからが本当のスタート」。壁は厚くとも決して実らない運動はないのだということと障害のある人もない人もこの地域で尊重されて暮らせる社会のための引き続く運動なくしては福祉の前進は約束されないということを一連の訴訟運動でわたしたちは学習しました。