ほっとけやん 第59話

わかやま新報2012年4月5日掲載

第11回障害者問題研究交流集会

ふたば福祉会「はっぴーわーく」わされん教育研修委員会副委員長 松崎吉信

去る3月3日、和歌山市の県民交流プラザ和歌山ビッグ愛にて、障害当事者・障害者福祉に携わる者が集い「第11回和歌山県作業所問題研究交流集会」が開催されました。
それぞれがそれぞれの立場で、日々の実践の交流などを目的として、例年通り約300人が参加しました。次々と行われる障害者制度改革の中で、今できることをみんなで考え、話し合うこと。それが今回のテーマ「あなたの想いは何ですか?」に表れています。
午前の全体講演には濱畑芳和氏(立正大学社会福祉学部社会福祉学科講師)をお招きし、「障害者制度改革の動向と展望」というテーマで講演していただきました。
まず、障害者制度改革のこの10年間を丁寧に振り返り説明していただきました。措置制度から支援費制度への移行、作業所の施設体系の変更、応益負担(利用者1割負担)などの問題…。そして今後、「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言」(以下「骨格提言」)に基づいた障害者総合福祉法は実現するのか?
そんなめまぐるしく変わりゆく制度の中で、障害者福祉に携わる者が今できることは、目の前にいる障害当事者の皆さんのために今後、どのようによりよく生きていくかを一緒に考えていくことです。
午後からは基礎的な入門講座や、作業所職員の日々の実践交流、作業所の運営課題の検討、給食の交流、相談支援の在り方、施設を利用している障害者本人たちの交流の場など、11の分科会に分かれ、それぞれのテーマについてレポート発表や議論が交わされました。
全体を通してどの分科会でも、日々の実践では乗り越えられない壁があり、誰もがその壁が「法律」であることはよく分かっていました。
「言いたいことを言えない苦しい社会」「人として、当たり前に自由に生きたいと思っているのに障害があるがゆえ、それができない社会」―こういった現実を抱える日本で、障害者の皆さんの「自分らしく・人間らしく生きること」を保証することが大事であり、それは、憲法25条にうたわれている「健康的」「文化的」に生きるということなのです。
「わたしたちのことをわたしたち抜きで決めないで!」平成22年1月に、障害者自立支援訴訟により国と交わされた基本合意や、そこから始まった新しい法律をつくる動きを経て作られた新法の基本方向をまとめた「骨格提言」は、2月の新法の素案でことごとく裏切られた形となってしまいました。
利用料の応益負担のために、支援を受けたい人に作業所に通うことをやめさせたり、命まで奪ってしまうことになった悪法の中身は、ただ一部の改定や名称が変わっただけで肝心なことはなに一つ変わってはいません。
国が動きたくないのなら、現場の障害当事者・障害者福祉に携わる者が国会請願署名運動などを進めて世論を動かします。これからの「道」をつくるのは、障害当事者と障害者福祉に携わる者の運動と日本に住む方々の賛同だと思います。