ほっとけやん 第201話

わかやま新報2023年12月7日掲載

療育の中から見えてきた課題

第二こじか園長 山口 薰

 児童発達支援センター第二こじか園では、「療育」を行っています。

 「和歌山市に住んでいると、わが子に発達のつまずきがあることを知り、児童発達支援センター(以下、センターと記載)に毎日通わせたくても、共働きやひとり親の家庭では入園をさせることができません。

 ことし、コロナ禍が影響したのか、保健所に紹介され、入園のために見学に来る保護者が激減しました。保健所に尋ねてみると、出生数や保健所での相談の件数が減ったためではありません。発達相談員がその子の発達の遅れから判断して、センターへの入園を勧めても「子どものことだけ考えるとセンターに毎日通わせたい、でも私も働かないといけないので毎日、午後3時のお迎えは無理。だから、保育所に」という保護者が圧倒的に増えた結果とのことです。

 1980年当時、和歌山市で幼児に発達の遅れやつまずきが分かっても、早期の療育を受けることができる所は限られていました。その中で発達相談員、保健師の呼びかけに教員、学生らが呼応し「子どもたちの豊かな発達を支える会」が発足しました。月2回の「療育」を始めて半年後、子どもが大きく変化(発達)したことを目の当たりにして、保護者たちの「毎日の療育」の願いがこじか園建設運動に発展しました。97年にこじか園は精神薄弱児通園施設として開園、福祉制度の変遷の中で知的障害児の通園施設、そして現在は児童発達支援センターと名称が変わりました。2010年ごろになっても毎年、療育を必要とする子どもたちは「待機児童」が出て、「子どもの育ちは待ってくれない」「ほっとけやん」の思いで、12年には第二こじか園を出発させました。

 今、センターでは児童福祉法に定められた「日常生活における基本的な動作の指導、知識技能の付与、集団生活への適切訓練その他の便宜の提供」を行っています。と同時に児童教育のねらいや内容について定めた「保育所保育指針・幼稚園教育要領」等や「特別支援学校幼稚部教育要領」に準じて「療育」をしています。毎日、同じ友達と保育者と過ごすことで達成できる発達課題ばかりです。

 発達に課題のある幼児の適切な療育は、今また、置き去りになろうとしています。毎日、センターに通うと「保育」を受けることができないという和歌山市行政の制約のためです。障害のある子がその子にとっての最も適切な時期に適切な療育を受けることのできない状況が始まっているのです。

 保育園や幼稚園等の「一時預かり」や「延長保育」を毎日センターに通う子どもの保護者が利用することを県内の他の市町村のように認めてもらうことはできないのでしょうか。センターでの療育が最も適切だと保健機関や保護者が判断したとき、和歌山市の子どもたちの健やかな育ちや安心して働ける保護者を守るために、どの子にも分け隔てなく療育を受けることができる環境づくりが不可欠であると考えています。