ほっとけやん 第203話

わかやま新報2024年2月1日掲載

なかまと共に30年、生涯現役で!いつまでも…

麦の郷居住福祉事業所 北村 悦子

 私は、麦の郷で30年、障害のある方(以下、なかま)の発達保障や権利保障をするための実践をしてきました。振り返ってみると、私には2度目の職場となる麦の郷に来た時、中学校の教師をされていた方に出会い、いろいろなことを教えていただきました。その先生の福祉の捉え方やなかまとの向き合い方の教えは、私の原点です。

 まず、発達とは、私にとって、言葉は知っていても何かもっと深いものがあると思っていましたが、とにかく新しい出会いと発見がありました。

 知的障害の方は、ゆっくり発達していくのだと。ひとつひとつの行動には意味があり、まず共感することが大事であること。それと生活まるごと把握すること。そうすると、どんな声かけや支援が必要か必然的にみえてくると教えられました。なかなか難しいことです。さらに、なかまの生きる権利や学習の権利がある等々。障害児者福祉や障害児教育の歴史等を教えていただきました。

 その先生は、「青年学級すばらしき仲間たち」という、一般の企業や共同作業所等で働いているなかまの集う場、誰かに相談できる場として、当時の和歌山市民会館の一室を借りて月2回、土曜の夕方、なかまが集まって賑やかに歌を歌ったり、余暇を楽しむ場を開催していました。私も声をかけられ参加しました。そこは、なかまの笑顔に勇気づけられ、私にとっても居場所となりました。この居場所は先生の亡き後もずっと引き継がれており、今も余暇を楽しみながらなかまが輝ける場となっています。

 30年という時の経過の中で、共同作業所やグループホーム等の福祉の事業所がたくさんできました。また、なかまが余暇を楽しむ、スペシャルオリンピックス、太鼓のグループ、ヒップホップダンスのグループ、よさこい踊りのグループ等も増えてきています。そこに出かけるためには送迎がいる場合もあり、ヘルパーの方が頑張ってくれています。

 現在の私は、なかまと働く共同作業所を経て、なかまが暮らすグループホームの生活支援員として仕事をしています。グループホームに入居されていた方の中に、SNSで知り合った方とご結婚されて子どもが生まれ、相手の方のご両親の力も借りて幸せに暮らしている方がいらっしゃいます。私たちスタッフは賛成しかねましたが、本人の結婚したい気持ちは強く、本人に寄り添うことが大切だと気持ちを切り替えて応援することにしました。今ではその子どもは小学生になりました。このことは、私たちスタッフが、なかまの気持ちに寄り添い、共感し理解ができるような支援が必要だったことを教えてくれた事例でした。

 これからは、高齢障害者の生活の場や、重度障害者が親と一緒に生活できる場等をどうすればできるか、他の事業所等と連携して作っていけたらと思います。

 なかまと共に、働く場、暮らす場、健やかな育ち場、余暇を楽しむ場など、これらは平和であることが大前提です。世界では、戦争が…。その国に一日も早く平和が訪れますように祈ります。私も、まだまだ、生涯、現役で、なかまと楽しみながら、悩みながら、なかまに助けられながら生きていきたいと思います。