「築100年の屋敷 地域の拠点に」

ニュース和歌山2013年3月23日掲載

紀の川市粉河のJR粉河駅前にある古民家、山崎邸がまちづくり拠点として再出発した。手がけたのは障害者支援に取り組む和歌山市の社会福法人一麦会(麦の郷)。オープニングイベントとして三~十日に聞いたアート展は約千四百人でにぎわった。今後はカフェやイベント会場として活用する計画で、田中秀樹理事長は「塀の向こうにこんなに立派な屋敷があることを知らなかった人は驚き、昔を知る人は懐かしんでいました。地域の人が交流できる場になれば」と話している。

麦の郷 粉河の山崎邸再生
カフェや上映会など計画

山崎邸は、第一次世界大戦の影響で好景気だった一九一七年、紀北、紀中で栄えた綿織物を生産した山崎栄助と栄吉が建てた。千六百平方メートルの敷地に近代和風建築で木造二階建ての母屋と二棟の蔵がある。十五畳の主座敷、十畳の仏間、傘を開いたような天井を備えた部屋をはじめ、金唐紙を貼った壁や大理石を使つたトイレなど豪華な造りが特徴で、保存の状態は良い。
麦の郷がモデルの映画『ふるさとをください』が二〇〇八年に公開されて以降、同法人は撮影の舞台となった粉河でウォークイベントなどを開いている。その中で紀州粉河まちづくり塾メンバーから山崎邸について教わった。管理人が住まなくなってから十年が経っており、所有者の許可を得て、麦の郷関係者や地元住民らが昨秋から清掃し再生させた。
アート展「古民家山崎邸と九つの表現」は、和歌山を中心に関西の現代絵画や彫刻などを屋敷の随所に展示。壁から天井にかけての全面に自作の新聞を貼ったり、階段を上ってすぐの所に人と同じ大きさの石こう像を置くなど、大胆な演出が訪れた人の目を楽しませた。
和歌山市の男性は作品だけでなく、建物そのものも見どころがたくさんありました」と満足した様子。出品した湯浅町の彫刻家、橋本和明さんは「通路や台所に天窓を設けるなどぜいたくを尽くした建物に、自分の作品をいかに結びつけるか考えました。 実際に生活をしていた場所に展示することで、暮らしの中にアートの視点を提案できる」と話していた。
今後、麦の郷のひきこもり者社会参加支援センター「創」のメンバーが運営するカフェや、絵画、音楽、映画を鑑賞する会場に積極的に活用していく。田中理事長は「地元の人や障害者、若者など様々な人に活用してもらい、地域の活性化につなげたい」と話している。